翻訳者インタビュー:リーガル翻訳と共に30年
こんにちは。さくらリンケージインターナショナル CEO 上田怜奈です。 今回は、弊社のリーガル翻訳者インタビューです。 日本の法学部をご卒業後、メーカーにて30年以上に渡り、海外関連法務(企業関連法規調査/国際契約審査/日英翻訳)に従事、現在リーガル翻訳者として、さくらリンケージインターナショナルに参画くださっているS氏(本人のご希望によりメディアでは仮名)に、リーガル翻訳について、また訳し方のコツを聞いていきたいと思います。 はじめに、S氏は弊社で企業の契約書の翻訳に主に携わってもらっており、通常日本人の人には英日翻訳を担当してもらっているのですが、S氏は、校正担当のネイティブも、ネイティブ翻訳者よりミスが少ないかもしれない、と言わしめるくらいの実力の持ち主です。 上田ー 本日はインタビューということで、色々お伺いできればと思います。どうぞよろしくお願いいたします。 S氏― こちらこそ。よろしくお願いします。 上田ー まず最初の質問です。最初からかなり大きいのですがー…これまでリーガル翻訳者として企業の契約書を多く翻訳してこられたS氏ですが、契約書の翻訳をする際に、気をつけていることを3つあげるとすると、どんなことがありますか? S氏― まず、正確に訳すのは当然として、誰が読んでも契約書の翻訳文の内容を迅速かつ間違いなく理解してもらえる様に気を使っています。伝わらないことには契約書として使えませんから。 また、2番目にあげることとしては、他の仕事と同様に、翻訳の場合も次の工程の方に迷惑をかけない様に納期は絶対に守ることが重要と考えています。これはビジネスに関する翻訳を行う限り、外せないことだと思っています。 3番目ですが…日本語契約の英訳化の場合、文章は短いケースが多いですが、ネイティブの方に比べて英語の語彙は少なく、また細かいニュアンスも完全には理解できていない可能性があるということを常に念頭に置き、必要な場合はネイティブに確認するとして、英語の用語の正確な選択に気をつけています。 上田― いろんな可能性を考えて、常に確度の高いものを出そうとされる配慮に感謝します。30年の経験の中で、これまで多くの問題に対処され、乗り越えてこられたかと思いますが、契約書を訳すなかで、難しいな、と思われたことなどありますか? S氏― そうですね、法律用語以外のところで、例えばITや新しいテクノロジーに関する用語など、日々ニュースや書籍で積極的に新しい概念に触れるようにしてはいるものの、 独特の言い回しや決まった訳語があるので、スパットはまる用語を早く正確に見つけることはなかなか難しく、 苦労することがあります。場合によっては、クライアントに直接聞いて、理解した後訳すこともあります。 上田― いつも、解釈の余地がいくつかある単語などをリストアップして送ってくださいますが、その際に、表記についての質問もよく書かれていますね。確かに、訳すよりもカタカナ表記でそのまま置く方が業界的に標準、などということもありますもんね(例えば、「サブスクリプション」など…)。 ここで、日本と海外の両方の契約書に関する業務経験があるS氏にお伺いしたいのですが、日本と海外の契約書で、大きな違いなどありますか? S氏ー 言い古されていますが、海外の英文契約は、1文が非常に長いケースが多く、その文章が関係代名詞や分詞構文あるいは節で並列につながっていること、また同じ様な意味の言葉が連続するケースが多い(Ex. sale, transfer, assign)ので日本語訳を正確に作成するのはパズルを解く様な根気が必要と感じます。 上田― 確かにそうですね。私もとある法律関係の文書の翻訳で、1ページまるまる1文というのが多くあったことがあって…そのときはとても苦労しました。頭がとてもすっきりしている時でないと無理ですね(笑)。 これが最後の質問なのですが… 海外との取引で、契約書を扱われる企業の担当者の方にアドバイスするとすると、どんなことがあるでしょう?